もっと もっと モルモット オルガ

パディントンでおなじみのマイケル・ボンドさん。ボンドさんは、オルガ・ダ・ポルガという名のモルモットの物語もかきました。訳者がオルガについて少しずつ書いていこうと思っています。

モルモットのことわざ


ある日、オガクズさんがギーコギーコ、バンバンバンとにぎやかな音をたてながらつくったのは、オルガの金網囲いでした。床がないので、しばふにおけば、そこには食べ放題の草のじゅうたんができるのです!


はじめて金網囲いにはいったオルガは、目のまえの草をさっそく食べはじめます。ふとみると、金網の外ではオガクズ家のみんなが、わくわくしながらオルガのようすをみていました。オルガはそれにきづいて、金網囲いをつくってもらったお礼をしないといけないわ、とおもいます。けれども、口のなかはもうシロツメクサでいっぱい……。


そこで、オルガはつごうのいいモルモットのことわざをおもいだします。


「いま口のなかにあるシロツメクサは、しばふにはえているシロツメクサふたくちぶんのねうちがある」


というわけで、「ありがとう、キュイーーーー!」というかわりに、ねうちのあるシロツメクサをもぐもぐしつづけたのでした。


これは、英語のことわざからボンドさんがモルモット用につくりだしたもの。もとのことわざはこれです。


A bird in the hand is worth two in the bush.
(いま手でつかまえている1わの鳥は、しげみのなかにいる2わの鳥とおなじだけのねうちがある)


こんなことばのあそびが、オルガの物語にはたくさんでてきます(もちろんパディントンのお話でも)。シェークスピアのもじりもあり、ときには訳者なかせだったりしますが、それでもやはりそんな部分をみつけると、ボンドさんうまい!と拍手をおくりたくなってしまうのです。

二十本の歯でがぶり

モルモットは、ウサギやリスとおなじげっ歯類。歯に特徴のある種類です。なかでもモルモットやウサギは、前歯も奥歯も一生のびつづけるそうです(ハムスターは前歯だけがのびます)。前歯は草をかみきるための歯で上下で四本、奥歯は草をすりつぶすためで十六本あります。


「さいしょにガツンといく」がモットーのオルガは、ノエル(のしっぽ)とのはじめてのであいで自慢の歯をつかいました。こんなふうに……



 じっとようすをうかがいました。へんな物体が、きゅうにむきをかえるひょうしに、その先っぽはくるんとまるまって、金網のあなからつきだしてきます。オルガはそのしゅんかんをねらって、とびつきました。
 ニ十本の歯でがぶり……



と、お話はつづきます。長年モルモットをかっていたボンドさんは、歯の数もばっちりしっていたのですね。


のびつづける歯のために、オルガの小屋にはトネリコの枝がおいてあります。枝でのびた歯をけずりながら、きもちよくとがらせておくのです。のびっぱなしになると、口のなかのあちこちに歯がささったり、うまくかみあわせができなくなったりして、食べることがむずかしくなります。食べられなくなるなんて、オルガにとっては一大事です。トネリコの枝は、自分の名前をオガクズにかくためだけでなく、ほかにもだいじな使い道があったのです。


最近は、ほろりとくずれるペレットを食べるモルモットも多く、獣医さんが草をたべましょうとすすめているようです。でも、金網囲いのなかで、もりもり草をたべているオルガには、そんな心配はなさそうですね。

名前――世界でたったひとつの財産


オルガはどんなときでも前向きで、自信にみちたモルモットです。その自信はどこからくるのでしょう。たぶん、それは「オルガ・ダ・ポルガ」という名前ではないかと思うのです。


ペットショップ時代、オルガに年長のモルモットがいいました。
「どんなときにも、じぶんの名前だけは、ぎゅっとにぎってはなさぬようにしなさい。名前などつまらぬものかもしれぬ。だがな、わしらモルモットには、ときに名前だけが、世界でたったひとつの財産になることだってあるのだから」


ところが、新しく家族になったオガクズ家の人たちは、オルガに名前があることを知らず、別の名前をつけようとします。たいへん! オルガは、自分の名前をまもるために、一晩かけて、ある大胆なことをします。


ひっしでまもっただいじな名前、「オルガ・ダ・ポルガ(Olga da Polga)」。
ほんとうに「物語にでも出てきそうな、ふしぎなひびき」があります。ボンドさんは、このモルモットにどうしてこの名をつけたのでしょう。


「オルガ(Olga)」は、東ヨーロッパやラテンアメリカの女性に多い名前です。北欧のヘルガという名前がもとになっていて、栄光、成功などの意味があるそうです。キエフ大公イーゴリ1世の妃、聖オリガが有名です(ロシア語だと「ル」でなくて「リ」になります)。


「ダ(da)」は、イタリア語やポルトガル語の苗字につかわれています。「ダ」のあとにくる語で、その一家がもともとどこの出身かがわかります。バスコ・ダ・ガマの「ダ」がそれですね。


では、「ポルガ(Polga)」が地名なのかというと、どうやらそうではないようです。
「Polga」はイタリア語の苗字に多く、ファーストネームではアメリカ人に多いようです。でも、由来はわかりませんでした。じつはネットで検索するといちばん多くでてくるのが「Olga da Polga」でした。いまや世界一有名な「ポルガ」は、オルガ・ダ・ポルガなのです。


ボンドさんの家には、歴代のモルモット「オルガ」がいました。そのオルガにエキゾチックなひびきがあり、オルガと韻をふむ「ダ・ポルガ」をつけて特別な名前に仕立てたのが、「オルガ・ダ・ポルガ」だったのかもしれません。


なににせよ、大好きなこの名前が、オルガにあふれんばかりの元気をあたえてくれているのは、まちがいありません。