もっと もっと モルモット オルガ

パディントンでおなじみのマイケル・ボンドさん。ボンドさんは、オルガ・ダ・ポルガという名のモルモットの物語もかきました。訳者がオルガについて少しずつ書いていこうと思っています。

名前――世界でたったひとつの財産


オルガはどんなときでも前向きで、自信にみちたモルモットです。その自信はどこからくるのでしょう。たぶん、それは「オルガ・ダ・ポルガ」という名前ではないかと思うのです。


ペットショップ時代、オルガに年長のモルモットがいいました。
「どんなときにも、じぶんの名前だけは、ぎゅっとにぎってはなさぬようにしなさい。名前などつまらぬものかもしれぬ。だがな、わしらモルモットには、ときに名前だけが、世界でたったひとつの財産になることだってあるのだから」


ところが、新しく家族になったオガクズ家の人たちは、オルガに名前があることを知らず、別の名前をつけようとします。たいへん! オルガは、自分の名前をまもるために、一晩かけて、ある大胆なことをします。


ひっしでまもっただいじな名前、「オルガ・ダ・ポルガ(Olga da Polga)」。
ほんとうに「物語にでも出てきそうな、ふしぎなひびき」があります。ボンドさんは、このモルモットにどうしてこの名をつけたのでしょう。


「オルガ(Olga)」は、東ヨーロッパやラテンアメリカの女性に多い名前です。北欧のヘルガという名前がもとになっていて、栄光、成功などの意味があるそうです。キエフ大公イーゴリ1世の妃、聖オリガが有名です(ロシア語だと「ル」でなくて「リ」になります)。


「ダ(da)」は、イタリア語やポルトガル語の苗字につかわれています。「ダ」のあとにくる語で、その一家がもともとどこの出身かがわかります。バスコ・ダ・ガマの「ダ」がそれですね。


では、「ポルガ(Polga)」が地名なのかというと、どうやらそうではないようです。
「Polga」はイタリア語の苗字に多く、ファーストネームではアメリカ人に多いようです。でも、由来はわかりませんでした。じつはネットで検索するといちばん多くでてくるのが「Olga da Polga」でした。いまや世界一有名な「ポルガ」は、オルガ・ダ・ポルガなのです。


ボンドさんの家には、歴代のモルモット「オルガ」がいました。そのオルガにエキゾチックなひびきがあり、オルガと韻をふむ「ダ・ポルガ」をつけて特別な名前に仕立てたのが、「オルガ・ダ・ポルガ」だったのかもしれません。


なににせよ、大好きなこの名前が、オルガにあふれんばかりの元気をあたえてくれているのは、まちがいありません。

緑したたるいなかの景色

オルガはたいていの時間を、小屋と金網囲いのなかですごしています。それでも、坂のうえにあるオガクズ家から谷をみおろす景色はオルガをあきさせません。


緑あふれる場所にすむオガクズ一家はうらやましいかぎりです。ただ、ボンドさん自身は、ロンドンに住んでパディントンやオルガの物語を書いていました。晩年はパディントン駅から遠くないところにすんでいたようです(骨董品屋さんのグルーバーさんのいるポートベロー通りの近くにもすんだことがあるそうです)。


オルガにえがかれる緑したたるいなかの景色は、ボンドさんが子どものころ、バークシャーのニューベリーでみていた景色なのかもしれません。


野の花々はニューベリーでも、ハイドパークでも、さらにはなれた日本でも同じ。新緑あふれ草花が元気なこの季節は、タンポポややわらかそうな草をみるにつれ、オルガがよだれをたらしそうだなとかんがえてしまいます。

アビシニアンモルモット(まき毛モルモット)

以前に、このブログでオルガがアビシニアンモルモットだということをかきました。今回は、この種類についてもう少し詳しくかいてみたいとおもいます。


この種類の特徴は、3cmくらいと長い毛。そしてオルガご自慢のくるんくるんとうずをまくまき毛です。オルガは自分のがいちばんとおもっているようですが、じつは、理想のまき毛のつきかたがあるでそうです。それは、体のよこに4つ、肩に2つ、おしりに2つ左右対称に8つあること。オルガがそんなまき毛をもっていたら、コンテストではべつな賞をもらっていたことになります。でも、それは本人にはないしょにしておきましょう。


どうしてアビニシアンといわれているのかは謎です。アフリカのエチオピアという国は昔アビニシアといわれていましたが、それとは関係がないようです。この種類がはやりだしたビクトリア時代に、きいたこともないような異国の名まえにしようと、音のひびきで商人がつけたという説もあります。


長年モルモットをかってきたイギリスの愛好家たちによると、アビシニアンモルモットは、とっても知りたがり屋で活発。そのため冒険にまきこまれやすいとか。そんなことをきくと、われらがオルガとボリスがひきおこす騒動も、アビシニアンだからしかたがないと納得できてしまいますね。なにしろDNAなのですから。